私は、学ぶこと自体が、とても好きです。新しいことにチャレンジしたり、新しい分野のことを学ぶのは、いつもワクワクします。
きっと、この文章を読んでいる、あなたも「学ぶことが楽しい」方だと思います。
そんな、あなたに言いたいことがあります。
「学ぶことを楽しむことを、決して妥協しないでほしい」
「誰がなんと言おうと、学ぶことを楽しんでほしい」
「学ぶことをもっと楽しめるように、学ぶ力を伸ばすことをしてほしい」
「つまり、振り切ってしまえ!」
今日は、あなたに、そして私に対して、メッセージを綴っていきます。
成果直結の「学習」を望む同調圧力に屈するな
toiee Lab を立ち上げ、ユニークな授業の仕方を開発し、それを広げていた頃のことです。公立学校の先生や、教育委員会の方、大学の先生、講師業の方など、教育機関に勤める方々にも、ラーニングについて伝えてきました。
しかし、いつも同じことを言われました。
「本当に楽しいし、素晴らしいと思う。我が子には、このようなアプローチをさせたいと思う。しかし・・・・」
その続く言葉は、外面的な成果への要求、不満、心配事でした。そして、新しいことを試してみるリスクについての懸念でした。
「このような方法をしたいが、主体性が薄い今の学生には届かない」
「理想的だと思うが、決められた授業の進捗に間に合わないのではないか」
「現場の先生に教えるのは難しい。今までのやり方を変えさせるのはできない」
「企業では、成果を求められる。何かいい話を聞けたと思わせないといけない。参加者主体で、何か生成するような学習は、提案しづらい」
など。
このような批判は、他者からだけでなく、もしかしたら「自分で、自分に」向けているかも知れません。
「こんなことをやっても、意味がないんじゃないか?」
「やるからには、完全に習得しないと意味がない」
「私はプログラマーになるわけじゃないから、プログラミングしてもしょうがない」
「いつ使い所がわからないことに時間を割くより、成果直結のハウツーをした方がいいのではないか?」
など、学びたい、学ぶこと自体に喜びを感じる気持ちと、成果を天秤にかけてしまっているかも知れません。
そんなあなたに言いたい。
学ぶことを「楽しむ」ことに、焦点を合わせよう
成果直結の学習も「楽しむ」工夫をしよう
学ぶことをもっと楽しめるように、「学ぶ力を高めよう」
「学ぶ力を高める」には、バリエーションが必要だから、興味あることを、積極的にチャレンジしたらいい。ただし「学び方を高める」をいつも意識する
そうすれば、学ぶ力が高まり、学ぶことがもっと楽しくなり、成果直結型の学習の効率もアップします。そして、ブレイクスルー、大きな成果は、成果直結の思考ではなく、別分野からもたらされます。それは、あなたが「学ぶことを楽しんだもの」からやってくるはずです。
だから「学ぶことを楽しむ!」あるいは、「学ぶこと自体から、喜びが溢れる状態」を常に作るようにすることを、常に意識してください。
私は、同調圧力に屈しなくて正解でした
私が大学で研究室に入った時に、プログラミングを勉強し始めました。大学の授業で、プログラミングはありましたが、全てサボっていたので、独学で始めました。
私は、プログラミングというものだけでなく、コンピューターそのものにも興味が湧きました。プログラミングの本だけでなく、コンピュータがどう動くのか、その原材料であるシリコンについても調べました。さらに、アルゴリズムとデータ構造の関係なども調べました。
また、プログラミングにおいて、単に覚えるのではなく、「一体全体、どうなっているの?」に興味が出て、メモリ空間での動作について調べたり、それを確かめるための実験プログラム(通常はエラーになったり、やってはいけないこと)を書きました。
さらに、実際にアプリを作るような場合、どんなプログラミング言語を使うのか?プログラミング言語の歴史なども調べていきました。そうやっていると、膨大な背景知識が増えていきました。
プログラミングの基礎的な部分は、2週間もあれば理解し、小さな人工知能プログラムを書き上げました。それを応用して、問題を解決するものを作りたくなり、さらにチャレンジをしました。
当時、研究室では「C言語」を使っていました。先輩も皆、C言語でした。しかし、私は、オブジェクト指向に興味があったので、オブジェクト指向関連の知識を貪欲に吸収し、あえて、オブジェクト指向で、必要なものを作りました。そこから、今では業界のスタンダードになった Java言語に進みました。
このようにどんどん勝手に勉強していると、諸先輩方から「このゼミは、C言語を使っているのに、君だけ違う言語を使っていると、困るんじゃないか?誰にも聞けないだろうし」と注意(あるいは心配?)されました。
私は、「ご心配ありがとうございます。これまでも、誰にも聞かず、書籍や、サンプルコードなどで学んできました。オブジェクト指向言語を使わなければ、もっと苦労するので、このまま好きにやっていきます」と答えました。
このようなことは、プログラミング言語だけではありません。
私は、当時の人工知能の様々な手法に興味を持ち、片っ端から学びました。遺伝的アルゴリズム、免疫アルゴリズム、ニューラルネットワーク、カオス、複雑系、人工生命、ファジィ理論。さらには、論理学のアブダクションなどの議論まで進みました。
諸先輩方からは、「なんでも首を突っ込んで、ブレブレの人間」に見えたようです。「亀田くん、もっと1つのことに集中しないと、どれも中途半端になるよ」と言われたことは、1回ではありません。
しかし、私の先生は、別に咎めるどころか、私に、もっとたくさんの分野を見せてきました。DNAコンピューティング、量子コンピューター、ユニバーサルデザイン、合意形成・・・本当にたくさんの分野に触れました。
これらの経験のおかげで、私は、博士課程に入学する頃には、博士号を取得することができる資格をえていました(飛び級が可能な状態)。
つまり、それらは、全て後から繋がりました。
あの時、同調圧力のようなものに屈せず、なんでも、楽しんで学び、そして「学び方に注意を向けて、学び方を工夫」してきてよかったと思っています。
うまく学べないのは、才能のせいではない
ところで、いろんなことにチャレンジしたいけど、挫折が多いと悩んでいるかも知れません。
安心してください。
私も、たくさん失敗しています。例えば、Zettel Kastenというノート術に興味を惹かれて、憧れて、トライし続けました。紙バージョン、Obsidian、Roam Research、Craft、LogSeq、Scrap、Mem、Reflect・・・。数えきれないぐらい、アプリを試したり、ノート術を見直し、たくさんの記事を読みました。
そうやって失敗した結果、改めて「ラーニング」とういう視点で、俯瞰する大切さを知りました。Zettel Kastenの場合、「メモをとっているその瞬間がハッピーになる」ような作り方を選ぶことが大前提だと気づきました。詳しくは、別の記事で書きます。
プログラミングだって、最初は、大混乱しました。
学校の授業で指定されている教科書を買って学びましたが、全然、ピンときませんでした。そこで、教科書が悪い!と思って、別の本を買いました。先輩に勧められた本を買ったのですが、意味不明でした。学校の教科書が、ちょっと丁寧な説明、カラーがついたぐらいでした。その後、独習C言語を買いましたが、私にはあいませんでした。
そうこうしている間に、「そもそも、変数って何?」「どうして箱?」などを考えたり、ポインターと呼ばれるもののメンタルモデルを自分で構築し、その理解が合っているかをテストするプログラムを書いてみたりしている間に、いろいろ分かってきました。
そうやって「自分でメンタルモデルを構築するような学び方」のインパクトを、大学生の頃に知りました。
つまり、「学べない時」は、違う方法を取るしかないだけです。今のあなたの能力と状況に合わせて、最適な学び方を選んでいけばよいのです。そして、おそらく、その学び方は、すぐに変更することが必要になるでしょう。
このように「学び方を探究しながら、目の前のものを探究するように学ぶ」ことが、全ての基礎になります。
今の私にできること
現状の私ができることは、以下のとおりです。
「学ぶことが好きな人」や「学ぶことが楽しい人」のために、
学ぶことを楽しむ姿勢を応援する
学ぶことが楽しくなるような「学び方」を伝える
一緒に、新しいことにチャレンジしてみる
ということです。
学ぶことは苦痛で、できたら避けたくて、効率化を望んでいる「成果直結型」の方に対して、私は何の影響力も持ちません。
私は、「学ぶことを楽しむ」「もっと楽しむために、学ぶ力を高め続ける」ことが、成果も出るし、ブレイクスルーももたらせると、確信してます。しかし、それを証明するほどの実績はありません。
あと、10年はかかるでしょう。
10年後、話を聞いてもらえるには、実績という形での証明を積み重ねる必要があります。
今ここで、私がやるべきことは、
学ぶこと自体が好き
学ぶこと自体が楽しい
という方々に、「もっと学ぶことを楽しもう!」、そのために「ラーニング」を一緒に学ぼう、深めよう、実践しよう!と呼びかけ、広げていくことだと思っています。
一緒に、学ぶことを楽しみませんか?
繰り返しになりますが、もっとも効果的に学習する秘訣は、「学ぶことを楽しむこと」です。
学ぶことを「楽しむ」には、様々な工夫が必要です。例えば、環境設計です。パフォーマンスが過度に求められる状況で学習をするのは難しいですし、楽しめません。リスクも多いです。ラーニングを実行しやすい環境を選んだり、テーマを選んだり、課題を小さくするなどの工夫が必要です。
また、楽しむには、「人間の特性」を利用することが必要です。内発的動機付けや、内的報酬の適切な設計を行うことで、私たちは、もっと学びから喜びを引き出せます。
いわゆるリフレクションも重要です。FILMシートと呼んでいるものを使って、予期せぬことを積極的に取り入れていく、学習スタイルをとること、さらに抽象度を上げ下げして、適切な学習メソッドを選んだり、自分で作るようにすることも大切です。
これらを私は、
セルフ・ラーニングデザイン
セルフ・ラーニングファシリテーション
と呼んでいます。もっと短いネーミングを考え中ですが、ラーニングの仕組みと、デザイン方法と、ファシリテーションを学び、自らに使っていくことで、私たちは、想像もしていなかった未来へと歩んでいけるはずです。
このような想いを持って、別プロジェクトで「KAMEDEMY」を行っています。
ボクが初めて亀田さんを知ったのは、自分でホームページを作ろうと思ったときです。もう12年も前で、お陰で自分のホームページを作ることが出来ました。
亀田さんからのメールは、毎回LimkedInでシェアさせてもらっています。みなさんとても興味を持って読んでくれています。何人かの方は有料会員を考えているようです。これからも興味深い記事を楽しみにしています。
とても励まされる記事でした。
自分の納得のいくペースであれこれ学んでいる様子は、成果直結型の学びの場では、ややもすると「のんびり屋さん」「サボり」「やる気がない」ように見えるものなのかもしれない、と肌で感じるようになってきました。
しかし実際には、自分自身の内側で発していた疑いの声でもあったのかもしれません。
> 「誰がなんと言おうと、学ぶことを楽しんでほしい」
ありがとうございます。やってみます!!