Membership.io (旧Searchie) を検討したが、不採用にした理由(2025年7月)
自動文字起こし、検索可能、独自コンテンツで回答するAIなど先進的な機能を提供するMembership.io について
Membership.io をご存知でしょうか?
非常にAIを駆使した「メンバーシップサイト」を運営するためのサービスです。歴史は古く、以前はSearchie.io というサービスでした。
今回、新しい教育サービスをリリースするにあたり、Membership.io を検討するも、採用に至らなかった経緯についてシェアします。
この記事では、Membership.io の一般的な評価ではなく、私独自のニーズに基づく評価をシェアします。
Membership.io とは?
全体像
Membership.ioは、コーチ、コンサルタント、教育者、インフルエンサーなど専門的なコンテンツクリエイター向けに設計されたクラウドベースのメンバーシップ・プラットフォームです。元々はSearchieという名前でサービスを開始し、現在のMembership.ioに名称変更されています 。
このプラットフォームの最大の特徴は、動画・音声コンテンツを自動文字起こしし、PDFも含め、それらを全て検索できる機能です。
ユーザーは長時間の動画やポッドキャストの中から特定の単語やフレーズを検索すると、その部分に直接ジャンプできるため(実際は、若干のずれや日本語での不具合があります)、必要な情報を素早く見つけることができます。
Membership.ioでは、AI機能を活用したコンテンツの自動整理、パーソナライズされた学習体験の提供、コミュニティ機能の統合、メンバー管理、決済処理などを一元的に行うことができます。
Zoom、Google Drive、YouTube、Facebook、Vimeoなど100以上の外部プラットフォームとの連携により、既存のコンテンツを簡単にインポートすることも可能です。
料金プラン
料金プランは月額29ドルのStartプランから、より高機能なGrowプラン、Scaleプランまで用意されており、オンラインコースやメンバーシップサイトを運営したいクリエイターにぴったりのサービスです。
Membership.io の独自性を利用するなら、$119(17,200円程度、月契約)になると思います。
パーソナライズ機能(自動化ではない)
Personalized Content は、ユーザーが閲覧したコンテンツと関連しそうなものを自動で推奨するなどの機能ではなく、ユーザーが初めてログインする時などに、アンケートをして属性を設定し、その属性を使ってグループを作っておいて、表示するコンテンツをフィルターしたページパーツを埋め込むなどの手間のかかるものでした(大変すぎる!)。
参照: https://help.membership.io/building-a-personalized-hub-experience
ゲーミフィケーション
Gamificationも、細かい設定ができますが、たくさんのバッチを発行するとなると、どんどん複雑になっていきます。
講座一覧
Membership.io は「複数の動画や音声コンテンツをプレイリスト」にまとめます。そのプレイリスト一覧を作ることで、講座一覧のように見せることができます。
細かく設定できる反面、数が増えてくると大変
講座(プレイリスト)の視聴ページ
プレイリストの再生画面は、使いやすそうに見えますが、続きから視聴するのは、ちょっとだけ難しそうです。ページのヘッダーには「第1話目」が表示されますが、再生は続きではなく、第1話目の動画を再生します(これは混乱した)。
Thinkificの場合は、前回の続きからすぐに再生されます。
再生画面は、機能豊富です。どこまで視聴したのかや、講座の概要がAIで自動的に作られます。また、文字起こしも作られますが、日本語環境では、1つの長い文章になってしまいます(残念)。
これを修正しようと思うと、管理画面でライブラリの中から該当の動画をクリックし、Transcriptの編集画面を開き、改行を入れるという作業が必要です。何のための省力化かわからなくなるので、妥協するしかないでしょう。
ただし、1つの長いものになると検索からの頭出しがうまくいきません
購入ページについて
有料会員サイトを運用する際、決済にStripeを導入することができます。Stripeで商品を作っておき、関連付けます。Membership.io が手数料を取ることはありません。
しかし、金額表示がおかしくなります。多くの通貨は、小数点があるため、以下のように、100分の1の金額表示になります。
解決策は「購入ページのメッセージ」に、「システムの都合上100分の1に表示されていますが、それぞれ・・・です。」と記載することですが、心配になるひとも多いでしょう。
無料体験はできない
なお、Membership.io で作った有料会員サイトは無料体験できません。Stripeのトライアルとも連動もしません。公式会員サイトでは、もう1つ別に「公開Hub(Webサイト)」を作って体験してもらって、そこから案内することが提案されています。
Membership.io は、Growプランだと3つのHub(Webサイト)を作ることができます。ただし、一番やすいプランだと1つしか作れません。
無料体験を用意できた方が、おそらくは顧客の安心感、納得感を出せると思います。この辺は、マーケティング、事前の販売戦略でカバーするしかないでしょう。
すぐに課金されないので、実際に試すのが一番
Membership.io は、
1つのライブラリ(総合管理画面)
複数のHub (公開・メンバー限定公開サイト)
で構成されています。
動画コンテンツは、ライブラリに読み込んで、プレイリストを作って、それをHubでも読み込むみたいな使い方をします。このあたりの仕組みがイメージできないと、「???」となりがちです。
さらに、Googleドライブからの読み込みんだ動画の扱いも、よくわかりません。なぜだか、動画の文字起こしが消えたり、再編集できなかったりします。
プラットフォームと連動しますが、基本的にPCから動画をアップロードするのが良さそうです(混乱しないために)。
また、各種設定が深い階層になっていて、この手のサービスが苦手な方には難しく感じるでしょう。
とはいえ、実際に触ってみるのが一番です。契約しても、すぐに課金されない(1週間ほど後)ため、とりあえず登録して、課金されるまでの間に一気に試して、採用するか、しないかを選ぶと良いです。
私は「採用を見送り」ました
数年ぶりに、Searchie (Membership.io)を使ってみて、基本的なところは変わっていませんでした。画面が可愛くなったり(犬の絵がよく出てくる)、文字起こし、動画のアップロードなどの速度が向上していました。
さらに、小さな改善は多々ありましたし、AIの反応も早くなりました。
しかしながら、以下の点で採用を見送りました。
「視聴体験」 : 続きを見るのが面倒です。最近見ていたプレイリストや、プレイリスト(コース)の続きから見る体験がしづらいです。これは、譲れない点だと考えました
「文字起こしの問題」: 日本語の文字起こしが、なぜか、1つの長い文章になってしまいます。検索精度も悪くなるし、頭出しも機能しません。改善するには、手動で、改行をして分割する必要があります。これでは自動化の意味がありません。
「顧客側の学習が必要」: ほとんどの人は、Webサービスに不慣れです。前の続きを見たい、最近見たコースにアクセスしたいなど、シンプルなことがスムーズにできないと、なかなか難しいでしょう。特に、Membership.io は、検索して頭出しが便利ですが、これは受講者の方々に使い方を説明しないと使ってもらえなさそうです
「AIのRAGの不安定さ」: 追加料金を支払うことで、動画コンテンツを使ってAIアシスタントが回答をしてくれます。この機能に大いに期待しましたが、思ったほどではありませんでした。明らかに存在するキーワードで依頼しても「英語で、答えられない」と答えたりします。Webページなども読み込めることになっていますが、日本語の問題なのか、回答されません。
「管理者向けのAI機能の不安定さ」: 実は管理者向けのAIもあります。既に収録した動画コンテンツを開き、そこから「記事を作成」なんてことができます。しかし、複数の動画にまたがっている知識を使うことができません。しょうがないんだけど。結局は、期待したことができなかったです。
「無料体験を提供できない」: これはマーケティング、販売プロセスで解決できますが、やはり「良い学習体験」を少しでも味わってもらって、安心して参加してほしいと思っています。それが実現できないのが痛いです。
「APIがない」: 私は一人企業なので、自動化をしたいです。しかし、独自にカスタムしたプロセスを作ろうにも、API提供がないので、手も足も出ません。
「通貨の問題」: 無料プレビューも提供できない上に、購入プロセスで「100分の1で金額が表示」されるのは痛い。しかも、状況によっては、説明文が出せません。これは、驚かせてしまうなーと思いました。
「管理者側の学習コスト」: 丸一日、あちこち触って探求しましたが、まだ慣れません。動作が不明(どう捉えたら良いかわからない)ところがあります。スタートするまで時間がかかりそうです。
なお、今まで通り、Thinkificを使うことにしました。
全く別の解決方法(Thinkificを使って)
Membership.io が未熟だとか、Thinkificが優れているなどというつもりはありません。それぞれ、適材適所です。私の場合、長くThinkificを使ってきました。APIを使った自動化も行ってきたので、熟知しています。
さらに、顧客体験も悪くありません。良くも悪くも、枯れた体験(古いけど、慣れ親しんでいて、驚かない)なので、受講者の混乱もありません。
しかし、今後は
手を動かしながら学ぶ60分程度の短いコースを主体にする
複数のコースを用意する(具体例を、それぞれ別のコースにする)
などを考えているので、コース数が増えてくると、必然として「検索したい」というニーズが現れてくるでしょう。Thinkificでは、第3者のプラグイン(拡張機能)を入れる方法がありますが、ニーズに適うものがありません。
そこで、ワークフロー(仕事の仕方)と、バイブコーディング(AIにプログラミングをしてもらう)を使って、独自の「AI検索」を作ることにしました。
実際、1日で、基礎が完成しました。
ワークフローは、以下のようにしました。1と2は慣れたら簡単です。操作も非常にシンプルで、時間も取られません。また、3、4はプログラムを組んだので、コマンドを実行するだけです。
コース動画を撮影、オンラインコースと同じフォルダ、ファイル名をつけておく
全ての動画をアップロードする
ローカルPCの動画をAIを使って文字起こし、ドキュメント化、メタデータ付与
RAG用のDBサービスにアップロード(Pinecone)
このプロセスで「コースコンテンツを検索できる状態」が作れました。そして、専用のMCPサーバーを立ち上げる(AWS上で)ことで、MCPに対応したAI(Claude、Copilot、ChatGPTなど)から、検索できるようにしました。
AIに「オンラインコースの内容を検索」してもらったり、どのコースや、どのレッスンが良いかをお薦めしてもらうことができるようになりました。
何よりも、同じ1日を使うなら、今後のためになる知識が増える「自分で作る」を選んだことは、自分にとって価値のある時間とエネルギーの使い方でした。
参考になれば幸いです。