長年コースを売り続けてきた経験を元にしたThinkificとGumroadの比較
毎月60万円以上を売り上げ続けられるならThinkific、それ以下ならGumroadがおすすめだが、ソロプレイヤーには、Gumroadが良い。その理由を詳しく解説します
オンラインコースやデジタルコンテンツを販売するプラットフォームの選択は、ビジネスの成功を左右する重要な決定です。私は長年Thinkificを使ってきました。一方で、実験的に、Gumroad を使用した結果、Gumroadの優位性も感じています。
今回は、単純な機能比較ではなく、「ビジネスの成功に関わるマーケティング機能」や「労働コスト」「IT能力」などの視点で詳しく解説します。
単なるスペック(機能)の比較表ではなく、コース販売をしてきた経験でしか語れないことをシェアしたいと思います。
前提: ビジネス成功に必要な機能をもったプランで比較する
今回、Thinkific vs Gumroad を行うにあたって、Thinkific側は、以下のような構成とします。
Thinkific Growプラン : 月額$199(約3.3万円)
Mailerlite Growing Businessプラン(2,500人) : 月額$25(4,000円)
Zapier Professional(1500タスク): 月額1万円
Mailerliteは「メール配信サービス」です。Zapierは、Thinkificの受講者をMailerliteに自動登録するための連携サービスです。
この3つのセットを用意しないと、Gumroadの機能には追いつきませんし、 この3つを用意しないと「ビジネスの成功は難しい」 です。
例えば、コースに興味を持った人が、気軽にお試しで買うことは稀です。そこで、無料プレビューや、無料コースを提供し、サンプルを通じて「あなたのことを信頼」してもらうプロセスが必要です。
無料プレビューや、無料コースを受講するために登録してもらい、その登録した人たちに、自動でフォロアップメールを送り、あなたのミッション、ビジョン、実績や、コースの価値などをしっかりと伝えるという自動セールスを行わないと、なかなかコースは売れません。
Gumroadは、上記のような販売の仕組みを作る機能を持っていますが、Thinkificにはありません(Growプランであれば、近い機能がありますが、簡素で不十分です)。
Thinkificで、Gumroadのようなことを実現するには、他のWebサービスを追加で契約し、連携させることが必要です。私の場合、さまざまなWebサービスを検討し、「Thinkific + Mailerlite + Zapier」を選択しました。
この組み合わせと、Gumroadを比較することが、現実的な比較になると考えています。
コスト比較と、ビジネス視点からの意思決定アドバイス
まずは、一番気になるコスト面から解説します。
毎月の固定費
Thinkific: 5万円
Gumroad: 0円
決済手数料
Thinkific: 3.6%
Gumroad: 13.6% (多少変動します)
Gumroadは、固定費が発生しません。通常、ビジネスを立ち上げて、すぐに売り上げが上がることは少ないです。ある程度、時間がかかります。集客をしたり、顧客教育を行なって、信頼関係ができてきたら、売れてきます。
副業や、サイドプロジェクトとして、オンラインコース販売、教材販売をするなら、ゆっくり時間をかけて、準備をすべきです。そのような段階にあるビジネスの場合、Thinkificの毎月5万円という固定費は、大きな負担であり、リスクになります。
また、ビジネスが軌道に乗って、最低でも5万円以上の売り上げを出さないと、赤字になってしまいます。
リスクを最小にするという視点では、Gumroad を選ぶべきです。
Gumroadの場合、売り上げから手数料が引かれます。Webサイトでは、10%と書かれていますが、トランザクションフィーや、クレジットカード決済費用が加算されたり、為替費用などがあり、概ね14%程度になります。 売り上げの86%が自分の手元に残ると考えてもらうと良いでしょう。
10,000円の商品を販売したら、8,600円の粗利となります。
Thinkificの場合も、決済手数料は別途必要です。この決済手数料は、Stripeというサービスに支払うことになります。その料金は、3.6%です。つまり、10,000円の商品を販売したら、9,640円の粗利となります。
Gumroadの8,600円と、Thinkficの9,640円を比べると、大きな差があるように見えますが、Thinkifcは「固定費が5万円必要」であることを思い出してください。
固定費を考えた損益分岐点(Thinkifcの方がお得になる)は、約50万円です。 毎月50万円以上の売り上げをコンスタントに上げ続けた場合、Thinkificの方が「販売費用が小さくなり」ます。
しかし、販売する商品単価によりますが、売り上げが増えると、顧客数や商品販売数が増えます。それらが増加すると、連携システムの利用料が増加します。また、3つのシステムを管理することを考えると、損益分岐点は「60万円以上」と考えるのが妥当です。
以上のことから、「ソロプレイヤー」や「ビジネスを開始したばかり」の人、毎月60万円以上を売り上げ続けられる確証がない人は、Gumroadがおすすめです。
以下では、機能比較行なっていきますが、差は非常に小さいと考えてください。細かい違いを紹介していくので、どうしても譲れない部分がある方には、参考になると思います。
受講体験の比較
Thinkificについて
Thinkificは「学習管理システム」としての側面が非常に強いです。管理者側から見ると、どのコースが、どれぐらい消費されているか?を分析する機能などが優れています。平均再生時間や、どのレッスンから、急に受講が止まっているか?なども把握しやすいです。
受講者側から見ると、Udemyなどの大手の受講体験と近いです。コースプレイヤー(動画再生)がスムーズで、動画を視聴完了すると、自動で次のレッスンに進みます。コースの途中で受講をやめ、再度アクセした時、自動的に前の続きから受講開始されます。しかも、動画の途中から再生してくれます。
また、クイズなどを用意して、理解を深める仕掛けを用意することもできます。レッスン動画に対して、コメントを残して、他の受講者と交流することもできます。
このように「しっかりと設計されたオンラインコース」を提供できることが、Thinkificの強みです。
しかし、これらの機能を使おうと思うと、かなり綿密にコースを設計する必要があり、大変です。相当経験を積まないと難しいでしょう。クイズや、コメント機能は、売り上げに直接貢献しません。それよりも、ノウハウや、知識や、内容、テーマ選定、フォロアップ、ビフォアセールスの方が、圧倒的に売り上げに直結します。
また、クイズで理解を促すより、動画のトークを磨いた方が、理解を促すでしょう。
まとめると、このような機能に惹かれて選ぶ必要はないと言えます。実際、私は、クイズも、コメント機能も使っていません。使ってみましたが、あまり喜ばれなかったですし、使われませんでした。
学校などで、評価に使うのなら必須でしょうが、個人が知識やノウハウを得る場合には、不要でしょう。
Gumroadについて
一方、Gumroadの受講体験は、非常にシンプルです。シンプルな画面に、動画が張り付いており、それを再生する体験となります。


自動で「前のレッスンの動画途中から再生」はできませんが、動画には、インジケーターがあるので、途中から再生可能ですし、どこまで見たか?を把握できます。
Gumroadでは、コンテンツを提供する際、「ページ」が使えます。1動画、1ページを割り当てることで、ページが目次のようになり、コースっぽくなります。
また、1ページに複数の動画を貼り付けられるので、ページに分けず、縦に動画を並べても良いでしょう。私のおすすめは「縦に動画を並べる」です。ページに分けると、どこまで受講したか見えづらいので、動画を縦にずらっと並べたほうが良いです。
「30レッスン、5時間のコース」などを提供するとなれば、Gumroadでは体験が悪くなりそうです。Thinkificの方が向いていると思います。
ただし、2025年に「コース機能を実装する」と告知しています。Thinkificのようなコース受講体験が提供されるかも知れません。期待したいところです。
なお、Gumroadは「アプリ」があり、アプリで手軽に視聴できます。Thinkificもアプリがありますが、そこまで便利には感じませんでした。動作が遅い、バックグラウンド再生できないなど、不便でした。
商品機能、ランディングページ、販売機能の比較
Thinkific
以下のような商品を販売できます。
コース単品
複数のコースや、コミュニティ機能をセットにした「バンドル(メンバーシップ)」
定期購読(コース単品でも、バンドルでも設定可能)
分割支払い
複数コースセットでお得に買えるような価格設定もできます。定期購読(サブスクリプション)も提供でき、毎月決まった金額を決まった期間支払う分割支払いも提供できます。
また、コース(あるいは、バンドル、メンバーシップ)を販売する際、複数の価格を設定できます。いわゆるバリエーションと呼ばれるものです。松竹梅のように複数の価格を設定できます。
しかしながら、松竹梅で、コースへのアクセス制限ができるわけではありません。購入後のワークフローで、違う何かを案内したりできますが、基本的には使わない機能です。
私の場合、高額な商品を「一括支払い」「3回払い」「6回払い」のように、複数の支払い方法を用意するために使いました。それ以外では、使っていません。
商品を販売するページ(ランディングページ)は、シンプルです。通常のWeb作成システムに比べたら使いづらいですが、デザインに妥協し、シンプルに使えば良いです。HTML、CSSがわかれば、無理やりコードを書いて、デザインすることが可能です(もちろん、技術力が必要ですが)。
購入、決済ページはシンプルでスムーズです。
無料プレビューという仕組みがあります。一部のコンテンツを無料プレビュー設定することで、購入しないが、ユーザー登録して、無料プレビュー登録することが可能です。これは、Gumroadにはありません。
この無料プレビューしたユーザーに対して、自動でメールを送る機能(Mail Automation)を、Thinkificが用意しています。かなりシンプルです。
Gumroad
コース単品
定期購読
分割支払い(定期購読を、指定回数で止める設定にすることで実現)
複数の価格(バリエーション)
Pay What You Want (価格を顧客が決める)
が可能です。
単品商品をまとめたバンドル商品は作れません。実現したい場合は、単品商品を作り、コンテンツ提供部分でページ機能を使って、他の商品のコンテンツをコピー(簡単です)すれば良いです。これで、バンドルっぽいことは実現できます。
複数の価格を設定でき、それぞれで得られるコンテンツを変更することができます。これは、Thinkificにはない利点です。
販売ページはシンプルです。トップに画像や、動画を載せられます。説明部分に動画を載せることもできます。過度な装飾はできません。シンプルに文章を書いて、販売ページとします。サイドメニューに、詳細データを入れたり、レビューを表示できます。
受講者にレビューをお願いすることで、これが強力な販売ツールになります。レビューをお願いするも簡単ですし、レビューを載せるのも自動です。すごく良いです。
Thinkificで同じことをしようとすると、かなり苦労して、私はやめました。
無料プレビュー機能はありません。その代わり無料商品を作り、それを無料プレビューがわりにすることもできます。また、無料プレビューの代わりに、ランディングページに、コンテンツの一部を貼り付けておけば良いでしょう。
商品を買った人にフォロアップメールを設計し、自動化できます。無料商品を用意して、メールオートメーションで、有料へ案内するなど工夫次第です。
日本語化について
Thinkific
かなり細かいところまで、日本語化できます。受講者が、ほとんど英語に触れないように、設計することが可能です。
Gumroad
購入ボタンや、決済画面には「英語」が混ざります。とはいえ、シンプルな英語なので、少しは抵抗があっても、大丈夫だと思います。
英語が少しでもあるだけで、抵抗を示す客層に販売する場合は注意が必要です。そのような層は、デジタルコンテンツは買わない可能性が高いとは思いますが。
マーケティング機能について
Thinkificについて
Thinkificは、限られたものしかありません。クーポンコードなどを発行できますが、とてもシンプルです。メール配信機能はありますが、シンプルすぎますし、アクセス解析ができません。外部サービスを使うことになります。外部サービスの機能は、かなり充実しています。
Mailerliteは、ビジュアルに優れたメールを作ることができます。複雑な条件で、メールオートメーションを設計できます。
Zapier連携をうまく設計(大変です!)すれば、無料プレビュー、有料購入、受講完了などのデータをMailerliteと共有して、その情報を使ってメールを送ることもできます。
アフィリエイト機能などもありますが、情報が少ないですし、事務手続きが増えそうなので、私は使っていません。
ブログ機能はありません。
この商品を買っている人は、この商品もおすすめ!のような機能も限定的です。カゴ落ちの人に販売促進するなどもできません。
Gumroadについて
基本的にGumroadだけで完結します。
ニュースレター機能がついています。送り分けもできます。メールオートメーションもあります。簡単ですが、アクセス解析も可能です。
クーポンコードも、用意されています。今後、強化されるようです(一人1回しか使えないものなど)。
商品購入時に、「こちらもどうですか?」と案内できます。
簡単ですがブログ機能や、ページ機能もあります。高度なことはできません。
アフィリエイト機能があり、アフィリエイトフィーは自動で支払ってくれます。また、特別な人のアフィリエイトフィーを増やすことも可能です。
技術力、英語力について
Thinkificについて
Thinkificは、3つのWebサービスを活用することになるので、準備が大変です。また、全て英語のサービスになるので(日本語のサービスで連携できるものがない)、それぞれの使い方を英語で読む必要があります。
とはいえ、Google翻訳を使えば、かなりカバーできると思います。
Thinkficは、技術力さえあれば、色々とカスタマイズが可能ですが、難しいでしょう。ソロプレイヤーでは、到底できないと思います(私は、プログラミングなどをしてきた人間なので、例外です)。
Gumroadについて
Gumroadの管理画面、ヘルプサイトは全部英語ですが、Google翻訳などを駆使して解決できます。Thinkificの方が、多言語を意識して、わかりやすい英語表現です。Gumroadはネイティブっぽいというか、砕けた形になっているように感じます。それが逆に読みづらく感じます。
Gumroadは、ITに強くないクリエイターのために設計しているので、とにかく立ち上げが簡単です。
その他
キャッシュフローについて
Thinkific: 売り上げは即時、連携しているStripeに計上されます。ただし、Stripeから引き出すのには、多少の時間がかかります。5日程度と考えておくと良いでしょう。
Gumroad: Gumroad側に貯められて、週1回のペースで支払いが行われます。月1回、四半期に1回などに設定もできます。Stripe経由で受け取ります(日本では、銀行に直接の支払いができません。海外ではできる国が多いです)
お金を自分の銀行口座に引き出すまでのプロセス
Thinkific: Thinkificで決済、即時で連携させているStripeに売り上げが入る。その後、Stripeに連携している銀行に振り込みを実行する(最短で5日程度)
Gumroad: 一旦Gumroadに貯められる。週1回ペースで、Stripeアカウントにまとめて送られる。Stripeアカウント上で、連携させている自分の銀行口座に振り込み実行(1-2日程度)
Gumroadの制限について
無料商品の場合、コンテンツのファイルサイズは、250MBまで
まとめ
月間売上が60万円以下のビジネス、特にソロプレイヤーや小規模事業者にとって、Gumroadは以下の理由で優位性があります:
固定費が不要で、売上に応じた柔軟なコスト構造
必要十分なコンテンツ提供機能
充実したマーケティング機能
シンプルな操作、設定、機能、運用
ビジネスの成長に従って、より高度なLMS機能が必要になった場合は、Thinkificへの移行を検討すると良いかも知れません。
段階的な成長を見据えた戦略として、Gumroadからスタートすると良いでしょう。
最後に、英語インターフェースについては両者とも同様の課題がありますが、ブラウザの翻訳機能を活用することで、実用上の問題は最小限に抑えられます。シンプルな使用方法であれば、言語の壁は大きな障害とはなりません。
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答えられる範囲で、回答させていただきます。