👆読み上げ音声をどうぞ
今日は、最新の「ラーニング・デザイン」の考え方をお伝えします。
もし、あなたが「教える立場(先生、講師、コーチ、ファシリーテーター)」なら、FARMを理解することで、効果的な教育を設計することが可能になります。
一方で、あなたが「自己主導型」「独学」で、何かを学ぼうとしているなら、FARMを理解することで、独学を効果的にしたり、壁にぶつかったときに、それを乗り越えたり、回避して、違う方向から学べるようになります。
FARMとは?
FARMは、
Formula : 型、学習の基盤
Adaptive : 複雑適応系のシステムを活性化させること
Reward : 報酬設計(外発的動機付け、外的報酬、内発的動機付け、内的報酬)
Mental Model : 深い理解をもたらすための要素
の4つの要素の頭文字をとったアクロニム(略語)です。
FARMは、農場、農園などの意味があります。また、耕す、栽培するなどの意味があります。
FARMに込められた意味
現代の教育は、成果を求めるあまり「工業化」されてしまっているものが多いです。工業化の特徴は、効率、標準化、一律の完成度です。学ぶ対象を「知識の側」から分類、系統立てて、順番を決め、一定ペースで流し込むような教育をしています。
このような教育へのアンチテーゼとして「自然農法的」な印象を与えるためにも「FARM」としました。
FARMという考えによって実現される教育は、「学習者中心」であり、各人の内面で起こる変化を重視します。しかし、単に「発展教育」のように、自発性万能で、子供達の可能性に任せておけば、何でも解決するとは考えていません。
自然農法では、環境を整え、種や苗の個性や、土地や季節や、生態系の影響を考え、一緒に植える農作物、そのタイミング、畑の状態変化などを高度に設計します。そして、種や苗が持つ個性を最大限伸ばします。
FARM(農業)のように、環境を整えてあげることで、自然と発芽できる状況を作り、その活性化を手伝うことを意図しています。つまり、ラーニングファシリテーションの方法論や、考え方を前提とした教育デザインです。
FARMによって可能になること(教える側)
FARMという明確な指針によって、教える側にとって「軸」を提供します。軸によって、体系的かつ効果的なコース設計、教育カリキュラム、内容の選定ができるようになります。
また、単に伝えるだけでなく、「学習者の学ぶ力や、学ぶ回路の活性化」のための仕掛けを考案しやすくなります。
Formula要素によって可能になること
何かを学び始める時、最初は右も左も分かりません。そのような状態において「Formula」は、非常に役立ちます。まずは、型を提供し、その型を使うことで、今までできなかったことが、ちょっと前進したりする体験、喜びを味わってもらうことが可能になります。
深い理解を与える Mental Model
一方で、ハウツーとしての型は、いずれは卒業する必要があります。型の裏側にある「メンタルモデル」を明確にしておくことで、教育の最終ゴールを持つことができます。多くの教育者は、自分が、どんなメンタルモデルを持たせようとしているか?に自覚がありません。
教える側が、メンタルモデルを意識するだけでも、教育設計は大きく前進します。
深い理解を獲得させる Adaptive
そして、このメンタルモデルの獲得プロセスは、覚えて繰り返すだけでは、渡すことはできません。高度なメンタルモデル(仕組み)は、言語化できるものだけでなく、言語化できないものも含まれます。
言語化できない理由はシンプルです。世界は、「複雑系、非線形」だからです。したがって、複雑なメンタルモデルを獲得するために、「複雑適応系 = 学習」が必要です。
この複雑適応系のパラダイム、構造、仕組みを理解しておくことで、教育を部分と全体と相互作用、創発といった視点で眺めることができます。
持続的で、健全で、創造的な学びに Reward
また、学習を継続的に取り組んでもらうためには、報酬設計が欠かせません。外発的動機付けや、外的報酬は、学習スタート時には有効であることが多いです(できれば、子供の教育では避けたいところです)。しかし、長く、継続的に取り組み、創造性を発揮し、教えられた以上を、勝手に学んでくれるように教育したければ、「内発的動機付け」「内的報酬」を意識して、設計することは必須です。
学ぶ側にとってのFARMの意味
現代社会は、生涯学習の時代です。学校で学んだものだけで、社会では成果を出せません。また、仕事を通じて慣れることで得られた知識や技能だけで、成果を出し続けることも難しいです。
最近の流行り言葉で言えば「リスキリング」する必要があります。様々な分野の知識を学んだり、深めたり、発展的に学習する必要があります。また、アンラーニングも必要でしょう。何となく身につけている「知識や、行動の前提」自体に疑いをかけて、前提、パラダイムを変化させていく、変容のような学習も求められます。
これらは、会社が主催する教育や、研修を受け身で受講しても得られません。
自ら積極的に学びを獲得する行動が必要です。このような場合、自分のために「ラーニングデザイン」ができれば、学べなかったものが、学べるようになります。もっと効果的、効率的に学習することができます。
さらに言葉に完全には表せられない、深い理解(複雑なメンタルモデルの構築)も可能にしてくれます。
まとめ
FARMは、新しい教育を担う先生、講師、コーチ、ファシリテーターにとって非常にインパクトのある概念です。
これらを深く学ぶことは、教える側の今後のキャリアや、成果、そして、育成する喜び、達成感、充実感に大きな影響を与えます。
また、独学・自己主導型で学習する人にも、多くの恩恵をもたらすと思います。
このFARMは、「ラーニング・ファシリテーション講座(2025)」で、深く学べるようにお伝えしていきます。
同時に、FARMを意識して作られた「楽しい講座」でも、学んでいただけます。
お楽しみに!